エリート上司の甘い誘惑
キスのことはもういいんだって!
思い出さなきゃいけないのはそこじゃなくて!
「うあああ、違う、……不満なんかじゃないぞ私は!」
「何悶えてんのやめてよ恥ずかしい」
顔から身体から熱くなって、ぎゅっと箸を握りしめ悶絶していたら望美に怒られた。
そうだ、社食でランチ中でした。
「あんた最近どうしたの。なんか仕事も注意力散漫だし。そのうち取り返しつかないミスするわよ」
「……わかってる。反省してる」
わかってる。
わかってるんだけども、何も手が付かない時ってのはそういうもんであって。
それに、もうひとつ気付いてしまったことがある。
私、あの夜。
泣いたことは覚えてるけど、何か口走ったりしなかっただろうか。
結婚式の日から約二週間、園田も新婚旅行から戻り出勤して来ているが、私とのことが噂に上ってるようなことは、ない。
相手が黙ってくれてるのか、私が喋らなかったのかはわからないが。
もう二度と、前後不覚になるような酔い方はしないと固く反省した。
恐ろしい事態を招くこともあるということを、つくづく実感中である。