エリート上司の甘い誘惑
あーあーあー。
やっぱ子供ってのは決め手なんですかね?!
どんな女か見も知らなかったけれど、新婦に負けるもんかと気合入れて今日のためにエステにも行き、フォーマルも新調した自分が馬鹿みたいだ。
端からそんな勝負ではなかったのだ。
「高見課長ー! やっぱ子供って可愛いもんですか?」
後ろを歩く、先日奥さんに子供が生まれたばかりの課長に声が飛び、釣られるように振り向いた。
デレっとだらしなく表情筋を緩ませた課長と、それを横目に苦笑いをする藤堂部長が並ぶ。
「そらぁ、まあ。うちはずっと奥さんが子供欲しがってたからなあ、尚更可愛いくて。あ、写真見る?」
「散々見たんで結構でーす」
きゃはは、と女性社員の笑い声が響いた。
子供一人で、幸せの花が咲く。
そんなもんなのかしら。
……じゃあ、もしも。
妊娠したのが私だったら?
ちらりと頭を過ってやめた。
彼は絶対にヘマはしなかった。
それが答えだ。