エリート上司の甘い誘惑
園田のことはムカつくが、今は後回しだ。
また着信があったら、と思うと気になって仕方ないのでスマホは鞄の中に仕舞い、再びパソコンに向き合った。
落ち着かなくちゃ、と何度も途中で深呼吸しながらも、一つ一つ確実に作成していく。
何時間経過したか、お腹も空きすぎて麻痺して来た頃。
漸く最後の確認をしているところで、どうしても一つ、レイアウトが上手く収まらない箇所があり微調整をしていた。
「あれ。んー……でもここ小さくすると見づらいしな」
ほんの、僅かなこと。
でも、それをほめてくれた東屋くんの言葉がぽんと頭に浮かんで、やっぱりスルーは出来なかった。
誰でも出来る仕事だけど。
それを丁寧にやることで、私の仕事なら確実だと誰かに思ってもらえることが、嬉しい。
「よっしゃ、でけたー!」
少し前に保存したデータと見比べながら、微調整し終えたデータの完成度に満足し、ぽちっと保存、しようとした。
「ストップ」
「えっ」
低い声が真後ろから聞こえて、保存のボタンをクリックしようとした瞬間にポインターがズレた。
マウスを握る私の手に大きな手が重なっていて、その手がポインターをずらしたのだ。