エリート上司の甘い誘惑
……数秒。


いつまでも触れる気配がなく、首を傾げた。



「……大丈夫か?」



ただ、気づかわしげな声だけが届く。
おそるおそる目を開けると、さっき私に近づいた手は何事もなかったかのように軽く握られ、部長の腰の辺りにあった。


ただ視線だけが、熱い。



「西原?」

「あっ、だ、大丈夫です! はい!」



大丈夫、って何が?
何のことを聞かれているのかわからないままに、大丈夫だと返事をしてしまった。


何が、かはわからないけど大丈夫です、部長。


ただ、これ以上見つめられると……大丈夫じゃ。
融けて、ほんとに融けてしまいそうです。
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