エリート上司の甘い誘惑
逃げるように一歩後ろに下がると、きぃ、と椅子が押されてデスクに行き当たった。


もう限界です部長、許してください!
この空気が大丈夫じゃないと、音を上げそうになった時。


きゅるるるる、と私の代わりに私のお腹が鳴いた。



「…………」



お腹の音って、すごいと思う。



「あの、部長」



さっきまでの、あのオフィスらしからぬ空気を綺麗に吹き飛ばしてしまえるんだから。



「……ぶふっ」

「我慢するくらいならいっそ笑ってくださいよ、部長」



さっきまでの熱い視線はどこへやら。
部長は最初はかろうじて無表情を装っていたけれど、そんなものはすぐに崩れた。


今は顔を横に逸らして、くっくっと肩を揺らして笑っている。
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