エリート上司の甘い誘惑
勿論、自信の持てる自分になりたいけれど、それよりも。
弱い自分も、守ってくれる人にそばに居て欲しかった。
そうだと思っていた人の腕は、別の女を守るためのものだった。
「……寂しいよぉ」
もう恥も外聞もわからなくなるほど酔っていた。
正直すぎる泣き言を、カウンターに突っ伏して呟いた時、背中に温かい体温が触れた。
布越しでもすぐに温かいと感じたのは、その手が大きくて労わるように優しく撫でたからだろう。
ん、と顔を上げて後ろを振り向いた。
……ような、気がする。
ぐら、ぐら、と視線が揺れて、どこが上で下かもわからない。
眩暈が気持ち悪くて、掌で両目を覆った。
耳鳴りがする。
ここまで酔ったのは初めてで、視覚も聴覚も心許ない状況がさすがに怖くなっていた。
「……、?――」
何か声をかけられたが、わんわんと頭に響くばかりでよく聞こえない。
ただ、知り合いだと声を聞いて安心した、ような、気がする。
ふわ、と上半身が傾いて、そこで一度意識が途切れた。