エリート上司の甘い誘惑

望美の言葉に、唖然とした。
確かに一理あるかもしれない、とその可能性を考えると、あんなにしれっと接近してくる彼がやはり信じられないと思ってしまったからだ。


だけどいくらなんでも、やっぱりありえないと思う。
余りにも白々しすぎるじゃないか。



「ないない。それはない」

「じゃあ後は……部長とか?」

「だからなんで!」

「だったら面白いことになりそうだなって。こないだ二人でご飯食べに行ったって言ってたじゃない」

「残業のついでだよ!」



っていうか、望美適当に名前上げて面白がってるだけだよね?!


それにだ。
やっぱり、納得いかない。



「キスして私が憶えてないから名乗り出れないんじゃ、それこそ検討なんてつかないじゃない」

「だから、そこで腕時計でしょ」



望美が、両手を頬に当ててやけに嬉しそうな顔をする。
私は意味が解らなくて、眉を顰めるばかりだ。



「高価な腕時計を残したのは、あんたがちゃんと思い出すきっかけになればってことなんじゃないの? 思い出してほしいから接近してくるわけよ。一夜限りの遊びにするならその夜あんたがキスだけで無事なわけはないし」

「……ちょ、ちょっと」

「向こうはあんたの記憶が戻るのを待ってるわけよ、見つけてくれるのを! それが部長とか東屋くんだったらあんたどうなのよ!」

「それってつまりイケメンで妄想したらってことでしょう?!」

「そうよ全部妄想だけどね? まったくありえないってこともないと思うけど」



いやありえないでしょ。
確かに、あの腕時計を見て相手が部長ならなって夢みたいなことは思ったことはあるけども。


実際、キスの相手が部長だったら?

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