イケメン御曹司のとろける愛情
 私はスプーンを取り上げながら翔吾さんに話しかける。

「あの、今日は川崎に行かれたんですよね?」
「ああ、うん。父に仕事の報告に」
「そのあとは?」

 つい探るように訊いてしまい、翔吾さんがわずかに首を傾げた。

 いけない。こんなんじゃ重い女丸出しかも。

 それにそもそも、こっそり二人の後をつけるようなことをしちゃったから、かえって二人の関係を訊きにくくなってしまった。

「いえ、なんでもないです」

 結局ごまかしてしまい、アボカドとマグロのカクテルを口に運ぶ。

「おいしいですね」

 そう言って笑いながらも、正直なところ、円崎さんのことが気になって、味は全然わからなかった。

「奏美さんはどう過ごしてたの? 用事があるって言ってたから、ゆっくりはできなかったかな」

 翔吾さんに訊かれたけれど、本当のことは言えない。

 なんとなくよそよそしい雰囲気で食事が進み、気づいたときにはメインを食べ終わっていた。

 デザートは“ショコラとマスカルポーネのムース”で、私にはカプチーノが、翔吾さんにはエスプレッソが給仕された。
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