イケメン御曹司のとろける愛情
「そろそろ出ようか」
「あ、はい」

 翔吾さんはウェイターに合図をし、ウェイターは革製の伝票ホルダーをテーブルに置いた。翔吾さんがクレジットカードを挟み、ウェイターが伝票ホルダーを持って下がる。すぐに会計処理を終えて戻ってきた。

 翔吾さんがクレジットカードを財布に戻し、席を立った。彼に続いて私も店を出る。

 エレベーターホールに着いて、私は翔吾さんに声をかけた。

「あの、私の分、お支払いします」
「俺が誘ったんだから俺に払わせて」

 翔吾さんが向き直って言った。

「あ、でも、すごく高かったし……」

 私のバイト代の何日分だろう、なんて考えたとき、翔吾さんが眉を寄せて言う。

「どうしてそんなに気を遣うのかな」
「気を遣ってなんかないです! 翔吾さんと一緒に食事ができてすごく嬉しかった――」

 私があわてて言うと、翔吾さんの右手が伸びてきたかと思うと、私の顔の横で壁にトンッと突いた。壁ドンされて驚いて見返すと、彼は怒ったような声で言う。

「本当にそう思ってる? 今日の奏美さんは心ここにあらず、な感じだった」
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