イケメン御曹司のとろける愛情
「あの、アッパーフロアでお仕事されているんですよね?」
「ん? ああ」

 男性はカップを受け取ろうと私の手元を見ていたが、視線を上げて私を見た。

「三十七階にあるインフィニティ・エアクラフト株式会社でMJRJプロジェクトに従事しているんだ」
「MJRJプロジェクト……?」

 私が聞き慣れない名称に首を傾げると、男性が苦笑した。

「ごめん、航空機に興味がないとわからないよね。メイドイン・ジャパン・リージョナル・ジェット・プロジェクトの略なんだ。初の純国産小型旅客機の製造プロジェクトだよ」
「あ、それなら一年くらい前にニュースで見たことがあります!」

 現在、大手航空機メーカーが中心となって開発・製造を進めている小型旅客機は、アメリカの航空機エンジンメーカーのエンジンを採用しているため、厳密には純国産とは言えない。そこで、さらに日本のものづくり復活の土台とするべく、エンジンまで純国産にこだわった航空機プロジェクトを始めた企業がある、というのをネットのニュースで読んだ記憶がある。

「そう、それなんだよ」

 男性はカップを受け取りながらにこりと笑った。

 そんなすごいプロジェクトがこのビルで行われているなんて知らなかった。そんなビルの二階で働いているなんて、誇らしい気分。なんだかワクワクしてしまう。
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