イケメン御曹司のとろける愛情
 ふーん。イケメンのお客さまが来たんだ。

 タイマーがピーッと鳴ってナゲットが揚がったことを知らせた。ナゲットを油から上げてバットに広げる。それを紙容器に入れて保温ショーケースに並べ始めたとき、レジ前からお客さまの声が聞こえてきた。

「エスプレッソをお願いします」

 その声にギクリとした。間違いようがない。翔吾さんの声だ。

 着信拒否設定して以来、当たり前だけど、翔吾さんから連絡はない。

 私は片手で黒縁メガネのツルに触ってその存在を確かめた。

 うん、大丈夫。

 ジャズピアニストの奏美とは違う地味な格好だ。

「サイズはどうされますか?」

 いつもより高い、真緒ちゃんの媚びたような声が聞こえてきた。接客は真緒ちゃんに任せて、私はそーっと事務室に向かう。

「レギュラーで」
「かしこまりましたぁ」

 真緒ちゃんは語尾にハートマークでも付きそうな口調で値段を伝えている。

「ありがとうございましたぁ」
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