イケメン御曹司のとろける愛情
「こちらの水無川が以前、奏美さんのライブで聴いて、イメージにぴったりだと言って広報部に推薦してきまして。私自身も音楽ファイルを拝聴し、今回実際に演奏を聴かせていただいて、ぜひ弊社のウェブサイトとCMで使用させていただきたいと思いました」
「あ、ありがとうございます。ぜひお願いします」

 なんだか信じられない。円崎さんからこんな話があるなんて。

 それより、翔吾さんが私の曲を推薦してくれたんだ……。翔吾さんの方を見たら彼は淡い笑みを浮かべて私を見ていた。そして小さくうなずく。その、本当だよ、と言いたげな仕草に、胸がキュッと音を立てた。

 私の曲を好きだと言ってくれたのは、本当だったの……?

 円崎さんが口を開く。

「水無川から初めて奏美さんのことを伺ったときには、失礼ながら奏美さんのことを存じ上げておりませんでした。ですので、実は奏美さんが水無川のお知り合いなのではと思ったのですが……?」

 円崎さんが探るように言った直後、翔吾さんが口を挟む。

「イベントで奏美さんのライブを聴いて、奏美さんを知ったんです。そのあとで少しお話ししたんですが、ご記憶にないようですね」

 グラッタチエロで食事をしたときにも、同じことを言われた。

『一年前、ポートスクエアでのライブのあと、少し話をしたんだけど、覚えてくれてたわけじゃなかったんだね』
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