イケメン御曹司のとろける愛情
　ライブのあと、翔吾さんから話しかけてくれたんだ。今度こそちゃんと思い出したい。大学生っぽい男子グループは違う。カップルの男性の方も違う。最後に話しかけてくれた男性は作業着姿の男性で……。

　私の思考を遮るように円崎さんが言葉を発する。

「特別親しい関係ってわけじゃないんですよね？」

　私は円崎さんの顔に焦点を合わせた。彼女は今までの“できるキャリアウーマン”らしいキリッとした表情ではなく、嫉妬のようなものをにじませた“女”の顔をしている。

　ああ、円崎さんは翔吾さんが好きなんだってよくわかる。

　知らなかったとはいえ、本当にごめんなさい。でも、もう親しい関係じゃなくなったから。

　それは自分で望んだことのはずなのに、心がずしんと重たくなった。

「お近づきになりたいとは思っていました。奏美さんのことはずっと知っていました。あなたの曲に励まされてきたから」

　翔吾さんを見ると、彼は切なげに微笑んで言った。その表情を見て、私の胸が罪悪感にも似た痛みを訴えた。

「それは……どうも……ありがとうございます」

　円崎さんが私と翔吾さんを交互に見てから、念を押すように言う。
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