イケメン御曹司のとろける愛情
「では、奏美さん、本日はありがとうございました」

　話を切り上げるように言われて、私は「こちらこそありがとうございました」と言った。立ち上がりかけて、ふと前に並んで座る二人を見る。

　このあと……二人はどうするんだろう。

　それが気になってしまい、私は思わず口を開いていた。

「あの、せっかくなので、よかったらご一緒になにか飲みませんか？」

　円崎さんが一度瞬きをして私を見た。

「あー……そうですね、はい」

　円崎さんの口調に少し不満が混ざっていた。本当は翔吾さんと二人で飲みたかったのかもしれない。

「じゃあ、水無川さんも」

　円崎さんが翔吾さんを見ると、翔吾さんは首を横に振って立ち上がった。

「いえ、僕はこれで失礼します」

　円崎さんが声を潜めて翔吾さんに言う。

「え、水無川さん、帰っちゃうの？　ホテルに泊まってるんだから遅くなっても平気じゃない」
「申し訳ないが、まだ仕事が残っていて」
「えー」

　円崎さんは、つまんないの、と言いたげに少し唇を尖らせた。美人がそれをやると、とてもかわいらしい。
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