イケメン御曹司のとろける愛情
　翔吾さんは姿勢を正して私を見た。

「奏美さん、本日はありがとうございました。では、失礼いたします」

　そうして一礼して、バーの出口へと向かっていった。翔吾さんが離れていく姿に、胸が痛くなる。

　やるせない気持ちになる私の前で、円崎さんがバーテンダーに合図をした。少し長めの髪をしたワイルドなイケメンバーテンダーが近づいてくる。

「ご注文をお伺いします」

　バーテンダーがにこやかに微笑みかけ、円崎さんが答える。

「私はマルガリータを。奏美さんはなににします？」
「あ、私はミモザをお願いします」
「かしこまりました」

　バーテンダーがバーカウンターに向かうのを見ていると、円崎さんが話しかけてくる。

「ここで働いている人のほとんどが、趣味や副業でバーテンダーをやってるんですってね」
「え、そうなんですか？」

　そんな噂は初耳だ。

　私の言葉を聞いて、円崎さんが驚いたように言う。

「奏美さん、ご存じなかったんですか？」
「はい」
「アンバー・トーンでライブを行うような方だから、知っていると思ってたのに」
「アンバー・トーンでライブを始めたのは最近なので……」
< 126 / 175 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop