イケメン御曹司のとろける愛情
 首をかしげて円崎さんを見ると、彼女が艶っぽくロングヘアをかき上げて言う。

「ミナガワ・エンジニアリングがエンジンメーカーとしてこのプロジェクトに名乗りを上げてきたとき、視察のために工場を訪ねたんです。そうしたら、汚れた作業着姿の水無川さんが出てきて」

 円崎さんは小さく肩をすくめて言う。

「そのとき思いっきり水無川さんを無視して、『設計責任者はどこですか』って言っちゃったんです。私を迎えるのにスーツ姿じゃないなんて信じられなくて。だって、私は円崎重工業の代表取締役一家なのよ?」

 円崎さんの目が据わっている。

 この人、今まで気づかなかったけど、意外とプライドが高いんだ。

「普通、設計図を描いているような人は、パリッとしたスーツを着てて、せいぜい上着を脱いでワイシャツの袖をまくっているようなイメージじゃないですか」
「そうなんですか?」

 イマイチ円崎さんが抱いている翔吾さんのイメージがよくわからない。円崎さんは不満げに頬を膨らませた。

「そうですよ! そんな人が製造現場で機械油まみれになってるなんて、思わないじゃない」
「機械油まみれになってちゃダメなんですか?」
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