イケメン御曹司のとろける愛情
 エンジンのことはよくわからないけれど、機械を製造するなら普通に機械油を使ってそうだけど。

 私の問いを聞いて、円崎さんが首を横に振る。

「ダメに決まってます。私にオイルの匂いが移るじゃないの」
「でも……いくら設計士だからって、ずっとオフィスにいるとは限らないと思いますよ。自分が描いた設計図でどんなふうに製造されているか、実際に現場に足を運ぶことだってあるんじゃないですか?」

 円崎さんの表情が険しくなった。

「そんなふうに、彼のことをわかってる、みたいな言い方をしないで」
「ごめんなさい」

 そうだった。円崎さんは翔吾さんの彼女なんだった。

「彼は私の前ではスーツでいてくれるのよ。私のためにね」

 もうこんな自慢話&のろけ話を聞きたくなくて、つい愛想のない口調になってしまう。

「それはよかったですね」

 話を終わらせたいのに、円崎さんが不機嫌そうに言う。

「でも、よくないのよ」
「なにがですか?」
「だって、彼、あなたの曲がすごく好きみたいで……この前なんか『人生を変えられてしまうくらい』好きだって言ってたんだもの」
「え?」
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