イケメン御曹司のとろける愛情
 円崎さんはまだなにか言っていたが、もう私の耳には入ってこなかった。

 そっか。翔吾さんと二度目の夜を過ごした次の日、彼は円崎さんに『好きだよ』って言ったんじゃなかったんだ。

『人生を変えられてしまうくらいに』好きだと言ってくれたのは、私の曲だったんだ……。

 なんだか胸が切なくなってきた。

 翔吾さんには私の曲だけじゃなく、私のことも好きになってほしい……。

 でも、円崎さんの前でそんなことを思うなんて、私って最低だ。

 そのとき、円崎さんが気だるげに額を押さえて口を開いた。

「なんだか……飲み過ぎちゃったみたい。申し訳ないですが、今日はこれで失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
「私はいいですけど、大丈夫ですか?」
「ええ」

 円崎さんはバーテンダーに会計の合図をして、近づいてきたさっきのワイルド系イケメンバーテンダーに会計を頼んだ。バーテンダーがクレジットカードを受け取り、会計処理のために席から離れた。ほどなくして革製ホルダーに挟んだカードとレシートを持って戻ってくる。
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