イケメン御曹司のとろける愛情
「水無川さぁん」

 円崎さんが甘えた声を出して上体を起こし、翔吾さんの腕に自分の両腕を絡めた。それを見て見ぬフリをして、私は円崎さんのバッグをベッドサイドテーブルに置く。

「それでは、私はこれで」

 急いで部屋から出ようとしたとき、翔吾さんの声が飛んできた。

「待って!」

 驚いて振り向くと、翔吾さんは円崎さんの両腕の中から腕を引き抜き、ハンガーラックに掛けていたスーツのジャケットを取って、羽織りながら私に近づいてくる。

「送ります」
「いえ、大丈夫です。一人で帰れます」

 だって、今日も控え室にしているスイートルームに泊まるつもりだから。

 けれど、翔吾さんは私の断りの言葉に耳を貸さず、ワークデスクの上のビジネスバッグをさっと取り上げ、促すように私の背中に触れながら部屋を出た。

 ほんの数秒のことなのに、彼に触れられて、鼓動が速まってしまう。

 ドアが閉まって、翔吾さんはふぅっと息を吐いた。私は翔吾さんを見上げて言う。

「あの、私に遠慮なんかしなくていいですよ。円崎さんと一緒にいてあげてください」
「どうして?」
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