イケメン御曹司のとろける愛情
 円崎さんは会釈して歩き出した。キビキビと歩く後ろ姿が、ほんの少しだけ寂しそうに見えた。

 円崎さんの姿が角を曲がって見えなくなり、翔吾さんが口を開く。

「これで俺の疑いは晴れたかな?」

 翔吾さんは問いかけるように私を見た。

 円崎さんと付き合っているわけじゃなかった。それはわかったけれど、でもまだ一つ訊きたいことがある。

 私は彼の方に体を向けた。

「じゃあ、どうして一週間前の朝、『やっぱり……間違ったかな』なんて言ったんですか?」

 私が言うと、翔吾さんは首を傾げた。

「え?」
「あの日、翔吾さんが円崎さんと電話で話している声で起きたんです。電話のあとで翔吾さん、そう言ったでしょ? 私と……あんな関係になったのが間違いだったってことなんだと思ったから、私」
「だから、こっそり帰って着信拒否に他人のフリまでしたってわけか」

 翔吾さんが半分納得しつつも腑に落ちないと言いたげな口調で言った。私は恥ずかしくて頬を染めつつうなずく。
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