イケメン御曹司のとろける愛情
「お疲れ様」

 翔吾さんが背中に回していた手をさっと出した。レースペーパーに包まれピンクのリボンがかけられたピンクのバラの花束を持っている。

「わあ、キレイ! ありがとうございます!」

 翔吾さんが花束を差し出し、私は両手で受け取った。立ち上るほのかに甘い香りに誘われ、花束を持ち上げて香りを吸い込んだ。そのとき、少し緊張したような翔吾さんの声が降ってくる。

「CD、出してないんですか?」

 顔を上げると、問いかけるように小首を傾げた翔吾さんと視線が合った。声同様、少し緊張したような面持ちだ。私はにっこり笑って答える。

「CDは出してないんですけど、デジタルミュージックサイトで音楽ファイルを購入できます」

 一年前と同じ言葉を一言一句違えずに言うと、翔吾さんの顔に大きな笑みが広がった。

「俺と話したこと、覚えてくれていたんだ?」
「実はついさっき思い出したんです。一年前、声をかけてくれたんですよね。今まで思い出さなくて本当にごめんなさい。エレベーターで助けてくれたときは、雰囲気が違ったのでわからなくて」
「まあ、仕方ないか。あのときは演奏を聴いて泣いてしまったのが恥ずかしくて、キャップで顔を隠してたから」
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