イケメン御曹司のとろける愛情
 反射的にそう答えたけれど、五〇〇一号室ってことは五十階じゃないの! 五十一階にある一泊二百万円とか、ありえない値段のスイートルームほどではないけれど、豪華なスイートがある階だ。

 嘘でしょ、たかが一ジャズピアニストのための控え室がスイートルームなんて。

「お荷物、お持ちいたします」

 金色の縁飾りの付いた高級感ある白い制服姿のベルパーソンが手を差し出し、私はガーメントバッグとボストンバッグを預けた。彼の案内でエレベーターに乗り、また上へと運ばれる。

 本当にスイートルームが控え室!?

 信じられない思いで案内されるまま、五〇〇一号室に着いた。

 ベルパーソンがドアを開け、私は息を呑む。

 まだ一歩も中に入っていないのに、あふれてくるラグジュアリー感に気後れしそうだ。

 だって、玄関ホールは大理石で、頭上に小ぶりのシャンデリアがあるんだもん!

「どうぞ」

 促されて玄関を抜けると、そこはリビング・ダイニングで、私が暮らすマンションのリビング・ダイニングのゆうに二倍はある。ベージュのソファと重厚なガラスのローテーブルがあり、驚いたことに窓際にはグランドピアノが置かれていた。
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