イケメン御曹司のとろける愛情
 私が答えると、男性は首から提げていたネームプレートを掲げた。

「航空評論家の木元(きもと)直也(なおや)と申します」
「あ、ジャズピアニストの山本奏美と申します」
「知ってますよ。さっきステキな演奏を聴かせてくれましたよね」
「ありがとうございます」

 私はにっこり笑ってお礼を言った。木元さんは私に半歩近づいて言う。

「普段はどんなところで演奏してるんですか?」
「レギュラーでライブを行っているのはアンバー・トーンとブルー・ムーンってバーです。それ以外にはイベントや結婚披露宴などで演奏しています」
「そうなんですね。あなたに会いに、今度アンバー・トーンに行ってみようかな。バーはどこにあるんですか?」

 アンバー・トーンのお客様が増えるのは嬉しいけれど……。

「今日はIA-1のお披露目ですから、私じゃなくて航空機の話をしませんか?」

 私が言ったとき、私の右側に誰かがすっと立った。見ると、いつの間に来たのか翔吾さんがいる。

「奏美さんのことは教えてあげられませんが、エンジンのことならいくらでもお教えしますよ」
< 163 / 175 >

この作品をシェア

pagetop