イケメン御曹司のとろける愛情
 翔吾さんの声に嫉妬がにじんでいて、胸がくすぐったくなる。

「翔吾さんってば」

 頬が熱くなってうつむいたとき、クラッチバッグの中でスマホが震えだした。

「ごめんなさい、電話みたいです」

 翔吾さんに断ってクラッチバッグを開け、スマホの画面を見た。そこに“お父さん”の文字を見つけて、息を呑む。

 そうだった! 私、あと一週間で三十歳になるんだった……。

 父から突きつけられた最後通牒の期限が迫っていることを思い出して、血の気が引くのが自分でもわかる。

「どうしたの? 大丈夫?」

 翔吾さんに心配そうに顔を覗き込まれ、私は「うん……お父さんからなの」と小声で答えた。

 今は雪絵さんに会いたいがために、週に一度、コンビニでバイトをしているが、それ以外はジャズピアニストとして仕事をしている。所属している派遣事務所が定期的に仕事をくれるようになって、仕事量も安定してきた。そのことをきちんと伝えて、このまま夢を追い続けることを理解してもらわなければ。

 私は覚悟を決めて通話ボタンをタップした。
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