イケメン御曹司のとろける愛情

「もしもし」
『奏美、父さんだ』

　愛想のない低い声が聞こえてきた。

「うん」

　私はゴクリと唾を飲み込んだ。

「お父さん、あのね」

　私の言葉を遮るようにお父さんが言う。

『その男は誰だ？』
「え？」
『今一緒にいる男だ。テレビに映ってる』
「ええっ!?」

　私は驚いて辺りを見回した。少し先、コクピットの辺りで円崎さんが説明している様子をテレビカメラが撮影している。

「私たち……あのカメラに入っちゃってるみたい……」

　私のつぶやきを聞いて、翔吾さんが「挨拶しようか？」と小声で言った。私は首を横に振って、通話口に話しかける。

「お父さん、彼は今お付き合いしている水無川翔吾さんって人。私は今日は純国産旅客機ＩＡ－１のお披露目のために生演奏を依頼されてここに来てるの。でも、普段は二カ所のバーでレギュラーライブをやってるし、ジャズピアノ教室でも教えてる。イベントの仕事も増えてきて――」