イケメン御曹司のとろける愛情
「お荷物はこちらに置いてよろしいでしょうか?」

 ベルパーソンがサイドボードの上を示した。

「はい」

 ベルパーソンは丁寧な手つきで荷物を置いて、私に向き直る。

「アンバー・トーンのオーナー、三好さまより、開演二十分前までにお越しくださいとのご伝言です」
「ありがとうございます」
「お部屋の中をご案内いたしましょうか?」
「いいえ、結構です」
「ご用がございましたら、フロントまでご連絡ください。それでは失礼いたします」

 ベルパーソンは一礼してドアから出ていった。

 一人になったことにホッとして、肩から力が抜ける。

 こんなすごい部屋がなんで私なんかのために……。そう思ってハッとした。

 この部屋は本来なら、樋波(ひなみ)明梨(あかり)さんが使うはずだったのだ。

 樋波さんは私が卒業した音大の四年先輩で、お父さんは有名なジャズバンドを主催している。もちろん親の七光りなんかではなく、樋波さん自身の腕であちこちのライブで引っ張りだこの人気だ。
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