イケメン御曹司のとろける愛情
「ちょうだいします」
「俺、東京や神奈川にいくつもバーを持ってるんだよ」
「そうなんですか」

 名刺には携帯番号と各種不動産オーナーという文字がプリントされている。この若さでいくつもバーを所有しているなんて、相当の実業家なんだ、と単純に感心した。西谷さんは内緒話でもするように、私の方に体を寄せる。

「そのうちの一つがロイヤル・クローバー・クラブっていう横浜のバーなんだけど。知ってるかな?」
「あ、はい」

 私は演奏したことはないけれど、ロイヤル・クローバー・クラブもジャズライブを提供しているバーだ。

「有名なジャズバンドがうちで育ったせいもあって、うちでライブをしたいって言うミュージシャンが多いんだよね」

 西谷さんの口調は誇らしげ……というより自慢しているように聞こえる。でも、それも当然だよね。ロイヤル・クローバー・クラブで育ったミュージシャンが、何人も日本で、そして世界で活躍しているのだ。オーナーとしては鼻高々だろう。

「きっとそうですよね」

 私だって機会があったら演奏してみたい! なんておこがましいけど。
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