イケメン御曹司のとろける愛情
 私のそんな密かなる願望を知ってか知らずか、西谷さんが話を続ける。

「でも、今日のアンバー・トーン同様、ロイヤル・クローバー・クラブでも演奏者が急遽、ライブをキャンセルしたりすることがごくたまにあるんだよ。特にベテランのミュージシャンなんか、急な海外公演が入ったり、体調を崩したり、とかね」
「はあ」

 イマイチ話の行き先が読めないでいると、西谷さんが思わせぶりに微笑んだ。

「そんなときは、奏美さんに声をかけてもいいかな?」
「えっ」

 信じられないような申し出に、私は思わず目を見開き彼を見つめた。キャンセルがあるのは“ごくたま”だとしても、ロイヤル・クローバー・クラブでライブができる可能性が得られるのなら、こんなチャンス、絶対に逃しちゃいけない。

「もちろん、奏美さんさえよければ、の話なんだけど……」

 西谷さんが左手を伸ばして、カウンターの上に置いていた私の右手に重ねた。ビクッとして引っ込めようとした手を、ギュッと握られる。

「わかるよね? 奏美さんさえその気になればいいんだ」
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