イケメン御曹司のとろける愛情
「行きましょう。ホテルでクリーニングに出せますから」
「でも」

 私は足を踏ん張って抵抗した。

 ドレスが染みになるのは嫌だけど、このままこの場を離れたら、ロイヤル・クローバー・クラブの話が流れてしまう! 寝るかどうかは別にして、そんなおいしい話をくれる人をこのままにしては……。

 でも、そんな私の気持ちなどお構いなしに、エレベーター王子はバーテンダーにクレジットカードを渡した。

「会計をお願いします」
「かしこまりました」

 バーテンダーは手早く会計を終え、クレジットカードを返した。

「おい、俺は彼女と話の途中だったんだぞ。失礼じゃないか」

 西谷さんが立ち上がろうとするのを、エレベーター王子は鋭い眼光で制す。

「失礼なのはそっちだろ」

 思わずひるんでしまいそうな低い声で言って、私の手をつかんだまま大股で歩き始めた。

「ちょっと待って」

 私はエレベーター王子の背中に呼びかけたが、彼は無反応だ。私は西谷さんを振り返ったが、彼は唇を引き結んでじっとしていた。私と視線が合って、ふっと目をそらす。
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