イケメン御曹司のとろける愛情
 彼の声に怒りがこもっていて、私は複雑な気持ちになった。

 私のことをそんなふうに評価してくれるのは嬉しいけれど、“私みたいなジャズピアニスト”だからこそ、あんな男の嘘に飛びつこうとしてしまうくらい焦っているのだ。

 私が落ち込んだのに気づいて、彼は私の顔を覗き込んで優しい口調になる。

「キミの曲はどれも好きだよ。特に六曲目の『フライ・ハイ』。あれが一番好きだ」
「ホントですか?」

 私は思わず顔を上げて彼を見た。

 『フライ・ハイ』は初めて自分で作った曲、という以上に、私にとって大切な曲だ。落ち込んだとき、寂しくなったときは、この曲を弾いて気持ちを持ち上げ、心の支えにしてきた。

 彼は微笑んでうなずく。

「ホントだよ。伸びやかなメロディを聴いていると、背中に翼が生えて空高く飛んでいけそうな気がするんだ。夢は叶うんだって勇気をもらった」

 彼の言葉に、私の顔が勝手ににやけていく。

 私はだらしなく緩んだ顔を見せまいと横を向いた。エレベーター王子は話を続ける。
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