イケメン御曹司のとろける愛情
 つい小声になってしまった。

「ぜひお願いするよ」

 水無川さんの声にホッとして顔を上げると、優しげな笑みをたたえた彼と目が合った。

 よかった。

 安堵しつつミニバーを開けてシャンパンのボトルを取り出すと、水無川さんが近づいてきた。

「開けようか?」
「そうですね。水無川さんの方が力がありそうですし」

 彼にボトルを委ね、食器棚からシャンパングラスを一つ取り出した。

「これは俺から、ステキな演奏をしてくれるピアニストへ」

 水無川さんが言って、私の隣に立ち、棚のシャンパングラスを一つ手に取った。

「私にも?」
「もちろん。あ、それとも飲んだら弾けなくなるとか?」
「いいえ、少しなら大丈夫です」
「それなら」

 水無川さんがグラスをテーブルに置き、ポンッと軽い音を立ててシャンパンの栓を抜いた。慣れた手つきでグラスに金色に泡立つシャンパンを注ぐ。

 私が椅子に座ると、水無川さんがグラスを一つ差し出した。
< 56 / 175 >

この作品をシェア

pagetop