イケメン御曹司のとろける愛情
 心配になって見つめると、翔吾さんはなにごともなかったかのように表情を和らげて言う。

「家まで送るよ」
「あー……」

 翔吾さんの申し出は嬉しいが、マンションまで戻っていたらバイトに遅刻する。

「せっかくですけど、大丈夫です」
「大丈夫って?」
「あの、家に戻らないんで」
「そうなの?」

 翔吾さんに怪訝そうにされたが仕方がない。

「はい」
「それなら、せめて駅まで送らせてほしい」

 畳みかけられ、私は困って目を泳がせた。

「えっと、用があるのは駅の方向じゃないんです」

 翔吾さんは表情を曇らせた。はっきり言えなくてごめんなさい。でも、私がコンビニでバイトをしている地味子と同一人物だと知られて幻滅されるのは嫌なんです。

「あの、ホント、大丈夫なんで」

 翔吾さんはもの問いたげに私を見た。
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