イケメン御曹司のとろける愛情
 私がはにかんで笑うと、翔吾さんは私の顔を覗き込んだ。

「夜、会えるのを楽しみにしてる」
「私もです。八時半にエントランスで待ってますね」
「わかった。それじゃ俺はいったんホテルに戻るよ」

 翔吾さんは片手を小さく挙げて、ホテル専用エレベーターに向かった。

 私は彼の背中がエレベーターの中に消えるのを見届けてから、バイトに行くべく一~十階専用エレベーターに乗った。


***


 今日は土曜日とはいえ、五階のフィットネスジムが営業しているし、アッパーフロアやミドルフロアの企業にも業務を行っているところがあるので、それなりにお客さまは来店する。

 十二時から一時は結構混雑するのだが、私と雪絵さん、それにバイトの大学生、磯崎(いそざき)紗良(さら)ちゃんとで手際よくさばいていく。

 一時十五分を過ぎて客足が途絶えたとき、雪絵さんが小声で私に話しかけてきた。

「ね、昨日のライブはどうだったの?」
「あ、おかげさまでうまくいきました」
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