イケメン御曹司のとろける愛情
「それとか、同じようなミュージシャンの卵のヒモ男と永遠に極貧生活とか。“一緒に夢を叶えよう”とか“プロデューサーに払うお金さえあれば二人ともデビューできる”とか言われて、貢いじゃうの」
「どっちにしろ貢ぐわけか」
「それか、“キミの演奏が好きなんだ”とか甘い言葉を言う男と、体だけの関係になっちゃうパターン。都合のいい女にされてるのに気づかないの」
「えー、そんなことあるかな? 山本さん、いつも地味っぽいし」
「地味でモテないからこそ、甘い言葉を真に受けるんだって」
「そっかー、それはヤバイね。山本さんって一途すぎて騙されやすそうな感じだもんね」

 一途……っていい言葉だけど、文脈からやっぱり褒められてはいないよね……。

 さっきよりも笑い声が大きくなり、二人して「声が大きいよ」とか「シーッ」とか楽しそうに言い合っている。

 確かに西谷さんに騙されそうになったのは事実だけど、ヒモ男や体目当ての男くらい見分けられる……と思う。

 でも、もう言い返す気力は失せてしまった。そのとき、自動ドアが開く音がする。
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