イケメン御曹司のとろける愛情
 私が答えたあと、通話は切れた。

 私は漠然とした不安を抱えたまま、改札を出て、B.C. square TOKYOに向かって歩く。大通り沿いの歩道は夜の八時を過ぎたところだが、街灯も明るく人通りも多い。

 この分だと八時十五分くらいに着きそうだから、翔吾さんに会えるまで三十分もある。そう思ったとき、前方に黒のスーツを着た背の高い男性の後ろ姿を見つけて、えっと思った。

 あの逞しい背中は……翔吾さんだ。

 このままだと私より早く着くのに、どうしたんだろう。なにか予定でもあるのかな?

 せっかく会えたんだし、と思って駆け出そうとして、ピタリと足が止まった。翔吾さんの左側に清楚な白いワンピースを着た女性がいて、同じ歩調で歩いているのだ。緩やかなウェーブのかかった落ち着いたブラウンの髪に見覚えがある。

 そのとき、女性が翔吾さんの方を見た。その華やかな横顔を見て息が止まりそうになった。

 なんで……あの人がこんなところに。

 信じられなくて瞬きをして見たけど、やっぱり彼女だ。インターネットの記事で、翔吾さんと公私ともに熱い仲だと書かれていた円崎可里奈さん。

 翔吾さん、今日は実家に帰ってたんじゃなかったの? どうして円崎さんと一緒にいるの?
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