イケメン御曹司のとろける愛情
 案内係が引いてくれた椅子に腰を下ろした。窓は床から天井までがガラス張りなので、この席からでも夜景は楽しめる。でも、翔吾さんと円崎さんのことを思うと、今は夜景どころではなかった。

「本日はご来店誠にありがとうございます。ご注文はお連れの方が来られてからになさいますか?」

 案内係にかしこまった口調で問われ、私は「はい」とうなずいた。

「かしこまりました」

 案内係が一礼してテーブルから離れたあと、私はチラッと周囲のテーブル席を見た。みんなスーツやワンピースなどのかっちりした服装だ。品のある落ち着いた雰囲気に気後れしてしまう。

 こういうところ、円崎さんなら慣れてるんだろうなぁ……。

 どうしたって円崎さんの顔が思い浮かぶ。

 翔吾さんはなんで私と会う前に円崎さんと会うの? ネットの記事に書かれていたのは本当? 私は翔吾さんにとって都合のいい女なの?

 考え出すと止まらなくて苦しい。

 翔吾さん、早く来て。来てくれるよね?
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