イケメン御曹司のとろける愛情
 翔吾さんはよくこのお店に来るのかな。

 翔吾さんを見ると、彼がナプキンを広げたので、私も二つ折りにして膝の上にのせた。

 平常心を保てない内面を悟られないよう、当たり障りのない話題をひねり出す。

「あの、夜景、すごくキレイですね」

 翔吾さんは視線を窓に送った。ふっと口元を緩めて言う。

「そうだね。でも、昨日の方が明かりが多かった気がするな」
「そうなんですか?」
「やっぱりオフィスビルの明かりがあるのとないのとでは違うと思うよ」
「あ、そうですよね。私、昨日はコンタクトをしてなかったんでよく見えなかったんです」

 私が言うと、翔吾さんは怪訝そうになる。

「ライブのときも?」
「はい」
「じゃあ、アンコールで俺の方をじっと見てくれたのは……俺に気づいたからじゃなかったんだな」

 翔吾さんの頬がわずかに染まり、それを隠すように手で口元を覆う。

「自意識過剰だったか」

 翔吾さんはつぶやくように言った。

 でも、ちょっと待って。“俺に気づいたから”って……?

 私は首を捻った。
< 97 / 175 >

この作品をシェア

pagetop