イケメン御曹司のとろける愛情
 翔吾さんがソムリエにうなずき、ソムリエは私のグラスにもワインを注いでテーブルを離れた。

 グラスの中のワインは美しいルビー色をしている。

「キレイな色ですね」

 私がつぶやくと翔吾さんが言う。

「そうだね。奏美さんってこういう感じの深い色がよく似合うよね。昨日のワインレッドのドレスもよく似合ってたけど、今日のネイビーもステキだ」

 翔吾さんの言葉が嬉しくて、自然に私の頬が緩んだ。

「ありがとうございます」

 ほどなくして最初の一品が運ばれてきた。読めなかったけれど、日本語では“一口前菜”と書かれていたメニューだ。

「ストゥッツィキーノのアボカドとマグロのカクテルでございます」

 なるほど、あれはストゥッツィキーノと読むのか。

 目の前のカクテルグラスには、緑と赤の組み合わせが色鮮やかな料理がちょこんと盛られている。

 カトラリーは外側から使う、とか、食事中音を立てない、とか、そういう最低限のマナーしかわからない。

 でも、きっと翔吾さんは慣れているんだろうな。っていうか、円崎さんと来たこと、あるんだろうか。彼女は今どうしてるんだろう。
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