魔王の甘い罠 【完結】
「桜・・」

『・・・・・・』

早苗ちゃんが、私を見る。
早苗ちゃんは、2年生のときに音楽の担当だった。

「あなた・・確か・・」

早苗ちゃんは、抱きしめていた手を離し、悪びれる風もなく、

「南沢さん、だっけ?」

と、透き通るような美しい声で言った。

『・・・・・・』

弱虫の私が、一歩後ずさる。
一刻も早く逃げ出そうと、必死に一歩、後ろへ下がる。
< 168 / 191 >

この作品をシェア

pagetop