なりのじぶん
わたしは突然の出来事に言葉が出ず、彼に引っ張られて走り出した。

誰もいない廊下にわたしと彼の足音が響き渡った。


――わたしは彼を知っている。

中学1年生から同じクラス。

でもあまり喋ったことはない。

というか、一方的に喋り続けてくる犬みたいな人だ。


「いたい?」

小関くんは走る方向を向いたままわたしにそう言った。

「…」

わたしは正直彼のスピードに追い付くのに必死で、

彼の手の大きさに動揺して口が動かない。


彼は急に走るのをやめた。
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