クールなヤンキーくんの溺愛が止まりません!
「…聞いたよ、沙良の誕生日会の話」
「あ…うん」
「冬李(トウリ)の気持ちはわかってあげてくれ」
お父さんは、部屋の真ん中にあるローテーブルの横に腰を下ろすとそう言った。
「…うん」
「お父さんの代わりに…冬李は沙良のお父さんになってくれてるんだ」
「…代わり?」
「あぁ。お母さんよりも先に、沙良に何かあるとすぐお父さんに話してくれたのは冬李だったんだ」
お兄ちゃん…。
お父さんから初めて聞くお兄ちゃんの話。
「自分だってまだまだ甘えたいはずなのにな。俺のことはいいから、沙良のこと見てあげろって、よく言ってたし今だって。でも…お父さんやっぱり仕事が忙しくてなかなか2人のこと構ってやらなくてね…」
「…うん。しかたないよ。お父さんが仕事頑張ってくれてるおかげで、今私たちは何不自由なく暮らせているんだもん」
「…あぁ。沙良にそう言ってもらえると救われるよ」
お父さんは少し目頭を押さえながらそう言う。
…泣いて…るわけじゃ…ないよね?
勉強机の椅子から、お父さんをチラッと見る。