課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
大変だったんですっ ~真湖~
「やりましたっ、課長。
ついに伊勢にたどり着きましたよっ」
宇治橋前の大鳥居を見た真湖は歓喜のあまり声を上げていた。
遷宮のあと、旧正殿の棟持柱を削って作られた、まだ新しく美しい大鳥居だ。
今の真湖の目には、実際以上に輝いて見えていたが。
「いや……伊勢行きの乗り物に乗ったら、着いて当たり前だと思うんだが」
と後ろで雅喜が言ってくる。
いや。
いや、課長。
大変だったんですよ、私にとってはっ。
バスに乗り遅れ、新幹線に乗り遅れ、宇宙エレベーターに乗ろうとして。
また目が覚めて、一からやり直してっ、と真湖は拳を握る。
そして、大変だった。
移動している間中、幼児から、若い女性から、お婆様方まで、みんなが課長を見ている気がしてっ!
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