課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
真湖たちは、おかげ横町を軽く見たあとで、電車で、鳥羽水族館に移動した。
人の少ない車内。
長い座席にぽつんと雅喜と座り、真湖は後ろを振り返る。
なんにもないなあ、と車窓から外を眺め、思う。
何処までも山と緑だ。
ほとんど無人駅なのではないだろうか。
いいなあ。
なんかこういうところも落ち着く、と思っていると、雅喜が、
「少し寝ておけ。
移動で疲れただろ」
少しでも寝ておくと、すっきりするぞ、と言ってくれた。
ありがたく思いながらも、なんだかその言い方が気になった。
「課長、最近、誰かと旅行されました?」
すごく実感こもっていた気がするのだが、と思って訊いてみる。
「行ったな」
「だっ、誰とですかっ」
「……お前だろう」
行っただろ、宮島、と言われてしまう。