課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
 

 



 電車を降りた真湖たちは、タクシーで宿へと向かった。

 今日の宿は、高級宿だ。

 高級、とつくと、逆に怪しい感じのものが多いのだが。

 安いあぶらとり紙とかに、高級あぶらとり紙と書いてあることも多いし。

 でも、今日の宿は、本当に高級だ。

 それも、更に、その宿でも高い部屋がとれたのだ。

 何故、その高い部屋にしたのかと言うと、元々値段が高いので、特別室にしても、大差なかったからだ。

 それでも、真湖はパンフレットを見ながら、旅行会社の人とかなり悩んでいたのだが。

 雅喜はその横で、どちらでも良そうな顔で、違うパンフレットを眺めていた。

 ……このお坊ちゃまめ。

 どうせ、その程度の金額でなにを悩んでるんだとでも思っていたのだろう。

 この人の実家こそ、高級宿か料亭みたいだからな、と思う。

 高い宿に泊まっても、すごい料理が出て来ても、あまり感慨はなさそうだ。

 その点、庶民はなにを見ても楽しいですよーっ、とつい、卑屈になってしまった頃、宿に着いた。
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