課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
……障子から透けて見えるんだが。
考えなしだな、こいつ。
テレビの前のマッサージチェアに腰掛け、雅喜はつい、真湖のこもった和室の方を見ていた。
和室の窓から光が差し込み、浴衣に着替えている真湖の影が障子越しに丸見えになっていた。
まあ、夫婦だからいいのか。
……いいのか?
と自分自身に問いかけながら、そちらから視線を外せずに居たのだが。
順調に色浴衣を着ていた真湖の動きが、帯まで来たときおかしくなった。
なんども結んでみては、ほどいている。
そういえば、今まで旅行に行ったときは、普通の寝るための浴衣だったからな、と思う。
そうだ。
四国にも行ってるじゃないか。
なにが誰と旅行に行ったんですか、だ。
しかし、そんな真湖のささやかな嫉妬が今は可愛らしくもあった。