課長の瞳で凍死します ~伊勢編~





 ……障子から透けて見えるんだが。

 考えなしだな、こいつ。

 テレビの前のマッサージチェアに腰掛け、雅喜はつい、真湖のこもった和室の方を見ていた。

 和室の窓から光が差し込み、浴衣に着替えている真湖の影が障子越しに丸見えになっていた。

 まあ、夫婦だからいいのか。

 ……いいのか?
と自分自身に問いかけながら、そちらから視線を外せずに居たのだが。

 順調に色浴衣を着ていた真湖の動きが、帯まで来たときおかしくなった。

 なんども結んでみては、ほどいている。

 そういえば、今まで旅行に行ったときは、普通の寝るための浴衣だったからな、と思う。

 そうだ。
 四国にも行ってるじゃないか。

 なにが誰と旅行に行ったんですか、だ。

 しかし、そんな真湖のささやかな嫉妬が今は可愛らしくもあった。
< 18 / 48 >

この作品をシェア

pagetop