課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
 そのうち、首にかけていた帯の端が、どうした弾みか、首に巻かれたらしく、くえっ、とニワトリが絞め殺されたような声を上げ、咳き込んでいた。

 黙って見ていた雅喜だったが、つい、イライラしてきて、立ち上がる。

「貸してみろっ」
と障子を跳ね開けた。

 ひゃっ、と悲鳴を上げて後ずさった真湖だったが、自分が、
「帯が出来ないんだろう、貸してみろっ」
と言うと、

「ええっ?
 なんでわかりましたか。

 超能力ですか?」
と言ってくる。

 いや、透視というより、盗撮に近いな。
 撮ってはいないが、と思いながら、誤摩化すように早口で言った。

「いいから貸せっ」
と真湖の手から帯を奪い取り、締めてやる。

 帯を締められながら、真湖が言う。

「……課長。
 めちゃくちゃ手馴れてるんですが、何故ですか」
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