課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
深夜、雅喜は誰かに肩をつつかれて、目を覚ました。
フットライトの灯りも結構眩しいので、すべて切っていたから、カーテン越しの僅かな月明かりしか部屋の中にはない。
「……沢田か?」
と横に立っている浴衣の影に向かって言ってみた。
真湖は雅喜の手をつかみ、起こそうとする。
なんだ? と思っていると、トイレに向かって引っ張っていった。
夕方、変に水が流れたりしたから、暗い中では怖かったのだろう。
仕方ない、ついていってやるか、とそのまま連れられていく。
自分もいつもより歩いたりして疲れていたのだろう。
目が完全に開かず、何度も目をしばたたかせながら、ついて行くと、真湖は暗がりのトイレに入った。
明かりをつけると目が覚めると、いつか言っていたが、今も暗いまま行くことにしたようだ。
まあ、目が慣れれば、真っ暗というわけでもないか、とぼんやり思う。