課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
 



 吞み過ぎたわりには爽やかな朝だ、と目覚めた真湖は思った。

 なにかこう、やり遂げた感がある。

 雅喜に言えば、爆睡しといて、新婚旅行のなにをやり遂げたんだと言われるかもしれないが。

 ところが、朝食の席で、雅喜が、夕べ、真湖ではない誰かと手をつないでいた話をし始める。

「うっかり可愛いとか思ってしまったのに……」
とぼそとりともらす雅喜に、

「幽霊をですかっ」
と叫ぶと、

「霊に嫉妬するな……」
と言われてしまった。

「ああああ、悔しいですっ。
 私は昼間、課長と手をつなぎたかったのに、言い出せなかったのにっ。

 なんで、霊がっ。

 私じゃなく、霊がっ」

 もう怖いとかいう気持ちはなかった。

「……やめろ。
 声がデカい」

 お茶をつぎに来た仲居さんが笑っている。
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