課長の瞳で凍死します ~伊勢編~
店を出て、駅までの道をまた歩く。
雅喜は何故か無言のまま、速く歩いたり、遅く歩いたりしていた。
どうしたんだろう。
トイレとか? と思いながら、ついて行っていると、かなり迷ったあとで、雅喜はまた歩くスピートを落とし、手を差し出してきた。
「え……」
「つなぐんだろ? 手。
今夜もお前の怨念が出て来てくれちゃ困るからな」
駅まであと少しだ。
二分もつないでいられない気がするのだが。
もしや、此処までの妙な動きは、なんとか自然に手をつなごうとしてのことだったのだろうか、と思うと可笑しくもある。
「課長……」
「なんだ」
「課長、好きです」
「どういう意味だ」
いや、どういう意味だってなんだ? と思ったのだが、彼の中では、唐突な言葉だったからだろう。
いや、私にとっては、まったく唐突ではないのだが。