片想い卒業します
私はベンチに座りながら、あの日を思い出していた。
今から3年半前。
その日は梅雨の中休みで、蒸し暑い日だった。
当事、中学一年生だった私は、急いで家に帰るためにタンポポ公園の中へ入ると、ベンチに座っていた森山君に出くわしたんだ。
「……森山君だよね?」
言葉使いが乱暴で、取っつきにくい印象の彼。
「……ああ。杉本だっけ?」
「うん、そうだけど。森山君、その手に抱えているのは何?」
彼の手には茶色のフワフワとした固まりが見えていて、私は覗きこんだ。
「あ、これ?」
「うん」
「コイツ、親とはぐれたみたいでさ、ここでうずくまっててさ。カラスの餌になったら可哀相だから俺が保護したんだけど」
そう言いながら森山君は私にその固まりを見せてくれた。
「わあ、かわいい。子猫だぁ」
我が家にも「紅葉」と言う年老いた猫がいるから、猫の扱いは慣れてるんだ。